”パン批評”世田谷「ブロート ハイム」
世田谷・桜新町にある「ブロート・ハイム」はパンの世界では有名な明石先生の運営されるブーランジュリーです。名古屋赴任12年間、名古屋の美味しいパンを求めて有名どころはほぼ歩きましたが納得のいくものはありませんでした。”何故ッ?”・・明石先生のパンが基準としてあったからです。12年前の「ブロート・ハイム」は本物のドイツ系パンを中心にフランスパンから食パンまで本物を提供してくれるお店でした。小麦の風味が楽しめましたし、小麦の焦げた香ばしさがふくいくとして楽しめるパンが、そこには常にありました。・・「ようやく、本物のパンを楽しめる」そんな思いで久しぶりに「ブロート・ハイム」を訪れました。




以前は、5人も入れば一杯になってしまう位の広さ
でしたが、改造してショップも3倍位大きくなってい
て、隣接したカフェでは焼きたてのパンを食べれる
ようになっていました。向って右側がショップ、左側
がカフェです。




皮はパリッとして小麦の風味や美味しさも感じら
れる焼き上がりになっています。
ウ~ンこれは今のトレンドなんでしょうか?中の生
地までパリパリなんです乾燥焼きしたように硬い
んです。例えればラスクのような触感でしょうか?
それに気泡が大きすぎて皮だけを食べてる感じは
金沢の加賀麩に近いかも知れません。
以前は中はしっとり感もあり気泡も適度な大きさで
散りばめられていたことを記憶しているだけに・・・
美味しいには違いないんですけど、これは以前と
は明らかに違うバケットだと言うしかありません。


生地にはしっとり感があります。単体では小麦の
風味はあまり感じられませんので、バターを塗る
か具をサンドすると映えるようになります。
このパンも多少気泡が大きすぎる感じがして、プ
ワプワな割りに引きが強くてさっくり感は無かった
ように感じました。
正直に言えばメーカー製でもパスコのグレードの
高いカテゴリーのパンなら遜色はないと思います。


このパンはオーソドックスで美味しかったです。
クロワッサンの基準になる味を保っていました。
丸の内のエシレのクロワッサンも食べましたが
あれはベツカテゴリーのパンで、ここのパンの
ほうが何にでも合うパンとして上位と思います。
値段が庶民的な割にはハイグレードなクロワッ
サンです。
このパンについては明石先生の粉とバターの
活かし方が反映されています。


上質なレーズンで下処理もキッチリされているの
で一粒一粒のレーズンそのものは美味しいんで
すが、いかんせん少ない・・です。レーズンパンな
のにレーズンの風味を楽しむ事は出来ませんでし
た。
食パンとしてはバターやサンドする具を活かせる
素材として自己主張が出すぎな良い味なのです
が残念です。私の中ではブドウの数で言ったら
浅草のボワ・ブローニュ、総合点では江戸川橋の
関口の方が上です。


このカスタードクリームには以前の面影があり
ました。ただ、以前は口にして直ぐ広がった”ま
ろやかさ”や”濃厚さ”がしばらく間があって後か
ら出てくると言うタイムラグ感はあります。
ややLightなレシピに変えたのかも知れません。


新しいメニューでした。軽~るいクリームでそれは
それで面白い味でした。後に残る風味感は薄い
んですが、今の時代の好みにはサラリとした風味
は合っていると思います。

以前はコンパクトなお店だけに明石先生が直々に仕込みから成形、焼成までなさっていたのだと思います。ですから・・私の中で「パン」の基準となるのが明石先生のパンだったのですが、今はレシピは明石先生でも実際に作業するのお弟子さんが担当するのでしょう・・以前の「ブロート・ハイム」とイコールではありません。
それに気になたのは、サワー種を使った”ドイツパン”が排除されてしまったことです。地味なパンですからそうは売れないのは分かります・・でも、じっくり小麦の味を堪能するにはドイツパンも組み合わせて購入したいと思うファンもいるハズなんですが・・?
行った日にショップ内で他の人がいるにもかかわらず写メで記念撮影をして「キャーキャー」騒いでいる、オバタリアンがいましたけどこうしたお客に迎合しているとしたら本当のパン好きは離れてしまうのではないでしょうか?今の「ブロート・ハイム」は基準点ではなく、普通に美味しいパン屋さんでしかない・・・というのが私の12年振りの印象でした。
お弟子さんになりたいという希望者は引く手あまたなのでしょうが、明石先生が現場に立たれることを切望するばかりです。

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